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長引く咳の意外な原因

「風邪をひいた後から咳が長引いてなかなか治らないんや」と受診した小太りの男性。このご時世まずは新型コロナが頭をよぎりますが、PCR検査はもちろん陰性です。血液検査や胸部エックス線検査でも異常は見当たらず、肺炎やぜんそくでもない様子。実は、長引く咳と消化器の病気が関係していることがあります。

比較的多い病気が逆流性食道炎です。胃で消化される途中の食べ物や、酸性の胃液が食道へ逆流すると食道は炎症を起こしてしまいます。もともと日本人には少ない病気でしたが、食生活の変化やコロナ禍での運動不足による内臓脂肪の増加などにより、最近は増加してきています。

食道の上端は、咽頭と接しています。食べた後にすぐ寝転んだり、逆流が強かったりすると、咽頭まで胃酸や食べ物が上がってきてしまいます。その結果、咽頭や食道の粘膜に炎症が起きて、胸焼けの原因となり酸の刺激で咳や声がれなどの症状が出ます。

逆流性食道炎が疑われれば、まず内視鏡検査を行い食道粘膜を観察します。食道に炎症やただれが認められた場合は、内服薬による治療を開始します。また、食事内容の見直しや適度な運動を取り入れるなどの生活習慣の改善も必要です。

「胃薬を飲んだら不思議と咳が治ったわ」。たまには食後のウォーキングもしてねと男性には伝えました。

令和3年9月17日 北國新聞朝刊掲載

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