メディア掲載

憩室出血 早急に治療を

 狭心症で治療中の70代の男性が朝から血便が出たと来院されました。腹痛や発熱などはありません。緊急で大腸内視鏡検査を行い、憩室出血と診断しました。憩室とは、消化管壁の一部が外側に突出し袋状になった状態をいいます。食道、胃、十二指腸、小腸、大腸のいずれにもできますが、大腸にできることが一番多い病気です。大半の大腸憩室は無症状ですが、炎症を起こしたり、出血した際には早急な治療が必要です。

 腹痛のない突然の血便は憩室出血を疑います。特に、高齢者で解熱鎮痛薬や抗血小板薬を服用されている場合は注意が必要です。大腸憩室からの出血は、どの憩室から出血しているかを同定することが困難なことも多く、内視鏡で観察した際に既に止血している場合も少なくありません。一方で約40%が再出血し、出血量が多く輸血を必要とすることもあります。

 内視鏡で出血している憩室を見定め、クリップで機械的に挟んで止血する方法が最も有効で安全です。大量出血の場合は、血管造影検査で動脈塞栓術による止血処置を行います。場合によっては手術で止血します。
さて、冒頭の患者さんは狭心症で血液をサラサラにする薬を服用していました。内視鏡で出血している憩室をクリップ法により無事止血しました。

 令和5年6月23日 北國新聞朝刊掲載

一覧へ戻る
PAGE
TOP