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糖尿病で乳房にしこり

 糖尿病で通院している50代女性。入浴中に乳房にしこりがあったと動揺して診察室に入ってこられました。触診ではしこりに痛みはなく、右乳房に2センチ大の硬いしこりを触れます。精密検査の結果、糖尿病性乳腺症と診断しました。

 糖尿病性乳腺症は糖尿病を患っている患者さんにみられる比較的稀な疾患で、痛みを伴わない腫瘤が特徴です。日本人では生活習慣病に伴う2型糖尿病の中高年女性に多いとされています。組織学的には乳腺線維症として分類される良性疾患です。乳がんの好発年齢と重なるため自己判断せず、医療機関で正確な診断を受けることが重要です。

 長期間のインスリン自己注射が主な原因と言われています。また、自己免疫が関与しているとの報告もありますが、はっきりとは分かっていません。診断にはまず、超音波検査やマンモグラフィを行います。しかし、乳がんとよく似た所見を示すことが多く、造影CTやM R I検査が有用です。最終的には、針生検や摘出した組織などを使って診断します。とはいえ最も覚えておいて欲しいことは、糖尿病で治療を受けていることを医師に伝えることです。確定診断ができれば、基本的には経過観察です。外科的に切除した場合には再発することが多いといわれています。糖尿病性乳腺症に乳がんが合併することもあるのでご注意を。

 令和5年1月20日 北國新聞朝刊掲載

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