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温水洗浄便座 使いすぎに注意

 80代の男性。「肛門が痒くヒリヒリして痛い。時々下着に血が付く。悪い病気かも?」と受診されました。肛門鏡による診察では、切れ痔と肛門周囲の炎症があり、がんはありませんでした。
 どうやら排便後だけでなく、便意を催すために何分間も肛門内へ水を入れるような使い方をしていました。温水洗浄便座の使いすぎが原因で発症するもので、俗に言う「温水洗浄便座症候群」の典型例です。
 洗う時間が長くなることで、肛門周りの皮脂がとれ、乾燥により皮膚が傷つきます。その結果、かゆみ、炎症、肛門括約筋の緩みが生じます。診察所見はさまざまで、肛門が真っ白になったり、反対に真っ黒になったりもします。シミやブツブツができることもあります。肛門が突っ張り、ヒリヒリしたり、切れ痔になることもあります。 
 便漏れとの関係も明らかになってきました。加齢により肛門括約筋の筋力が低下している状況で温水洗浄便座を長く使用すると、いわゆる浣腸の効果で、便の一部が排出されやすくなります。しかし、時間が経つと直腸に残った洗浄水が便と混じって肛門外に出てくるために、便が漏れやすくなります。さて、冒頭の患者さん。排便後にのみ、水流の強さを最も弱くして、水温は低めに、洗浄時間は5秒以内にするように勧めました。お尻のトラブルでお悩みの方は専門医にご相談ください。

北國新聞「健康よもやま話」7月17日朝刊掲載

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