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ストレスが招く機能性胃腸症

「胃が痛くて、胸やけもずっと治らん。病院へ行って調べてもろたけど検査では何も異常ないんやわ。先生、いっぺん診てや」
おやおや、患者さんの悩みは深刻な様子ですが、診察では特に異常はありません。おそらく機能性胃腸症でしょう。内視鏡検査でがんや潰瘍、炎症などの病気がないのに、胃の機能(働き)が低下することによって起こる状態をいいます。
以前は慢性胃炎、神経性胃炎、胃弱などと診断されていました。
 しかし、実際にはさまざまな症状があること、炎症がないのに「胃炎」というのは正確ではないことから、最近では機能性胃腸症と呼んでいます。消化器専門機関を受診した患者さんのうち、約半数がこの病気だったという報告もあるほどで、胃の病気の中で一番メジャーな存在かもしれません。

 胃痛、胃もたれ、胸やけ、腹部膨満感、吐き気など多彩な消化器症状が特徴的です。この病気は、日本人の4人に1人が経験しているまさに現代病です。ストレスなど心理・社会的要因に、胃酸分泌亢進、胃粘膜の萎縮などの身体的要因があいまって発現すると考えられています。
 治療には画一的なものはありません。アルコールの取り過ぎに注意し禁煙を心がけます。睡眠を十分にとり、適度な運動でストレスをためず気分転換をはかります。三度の食事を規則正しくとり、よく噛みゆっくりと食べ、消化に負担のかかる甘いもの、脂肪分の多いもの、濃い味付けや強い香辛料は避けます。

 さて冒頭の患者さんには、話を十分に聞いてから、怖い病気ではなくストレスが主な原因であることを説明しました。生活習慣を少し見直しただけで、すぐ症状はよくなりました。患者さんによっては複数の薬を必要とする場合もありますが、早めの検査と安心が何よりも良薬となることは間違いありません。

(北國総合研究所 北國TODAY 夏号 vol.63)

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