当院では、特殊光観察技術を搭載した最新式ハイビジョン内視鏡システム(EVIS X1)を導入し、消化管内視鏡検査・消化器がん検診を行っています。
EVIS X1とは
EVIS X1には、病変の発見・診断・治療の質や検査効率の向上を目指した新技術が搭載されており、がんをはじめとする消化器疾患のより高精度な観察・治療が可能となりました。
経鼻内視鏡検査や大腸内視鏡検査を行う際に、特殊光を用いて粘膜の微小な血管や腫瘍の模様を強調して詳しく観察するという NBI(Narrow Band Imaging)という機能が搭載されています。また、オリンパス社が誇る超高感度CCDによって正常粘膜と病変を異なる色調で表示できる蛍光内視鏡(AFI : Auto Fluorescence Imaging)という機能も搭載されています。
この最新機器には2つの従来の技術に加えて、特定の波長の光を照射することで、深部組織のコントラストを形成する、光デジタル技術を用いたオリンパス社独自の新たな画像強調観察技術である「RDI(赤色光観察)」や、通常光観察での粘膜表面の「構造」「色調」「明るさ」の 3 つの要素を最適化する画像技術の「TXI(構造色彩強調機能)」といった、独自の最先端技術を搭載しており、より精度の高い内視鏡検査を実現しております。
当院ではこれらの特殊な観察機能に加え、高解像度の拡大内視鏡を併用することにより、微細な病変の発見へ向けた内視鏡検査が可能です。
NBI(狭帯域光観察:Narrow Band Imaging)
「NBI」は、血液中のヘモグロビンに吸収されやすい狭帯域化された2つの波長(390~445nm/530~550nm)の光を照射することにより、粘膜表層の毛細血管、粘膜微細模様の強調表示を実現します。擬似的な狭帯域画像を信号処理する方法では、粘膜組織の状態や観察条件によって結果が変化し、十分な効果を発揮できない恐れがありますが、「NBI」では、実際に照射する光の波長を変えているため、常に粘膜表層の毛細血管及び粘膜微細模様を効果的、安定的に強調処理することが可能です。
早期胃癌の範囲診断の精度向上
⇒ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)普及に伴い、浸潤範囲を正確に決める重要性が高まる
※血管の走行状態の変化を観察
【通常観察像】
【NBI観察像】
早期胃癌における分化型腺癌と未分化型腺癌の鑑別
⇒癌の組織型をNBIで即座に鑑別し、治療方針を正確に決定する
【NBI観察像】
分化型早期胃癌
(fine network pattern)
【NBI観察像】
未分化型早期胃癌
(corkscrew pattern)
大腸病変の視認性向上
⇒腫瘍性病変は毛細血管が豊富になるため光が吸収され茶色調として表示される
通常観察では発見困難な平坦型、2mm程度の病変発見に効果を発揮する
【通常観察像】
【NBI観察像】
色素内視鏡の代用
⇒大腸ピットパターン診断では、主にインディゴカルミン、ピオクタニンを使用するが、NBIではスイッチひとつで類似の画像が得られる
【通常色素撒布像】
【NBI観察像】
NBIではピット自体を観察しているのではなく、毛細血管により形成された構造を見ている
コントラスト法とNBIでは観察しているピットパターン像が反転する
腫瘍・非腫瘍の鑑別診断の新たな展開
⇒ピットパターン診断に加えNBIによる毛細血管の観察により、腫瘍・非腫瘍性病変の鑑別が容易になります
非腫瘍性病変では一般的に血管の変化が起こらない
腫瘍性病変では通常より拡張した網目状血管が観察される
AFI(蛍光観察:Auto Fluorescence Imaging)
AFIとは通常光では見分けることが難しい粘膜面の微細な違いを、2色の光を照射することで可視化し、観察可能にする機能です。
特殊な青い光を粘膜に照射し、粘膜下層から反射した自家蛍光を観察する技術です。従来の内視鏡では発見・診断が難しい早期の腫瘍性病変を、蛍光の強度や色調の違いとして表示しますので、がんの発見がしやすくなります。AFIを使用すると、病変部では特殊光の反射具合が異なるため、小さな病変でも浮かび上がって見えてきます。
EDOF(被写界深度拡大技術:Extended Depth of Field)
近い距離と遠い距離のそれぞれに焦点が合った 2 つの画像を同時に取り出して合成することで、リアルタイムに焦点範囲の広い内視鏡画像を得る技術です。本技術を内視鏡に搭載したのは「EVIS X1」が世界初です。これまで、内視鏡検査・治療を行う際、心臓の拍動や腸の蠕動運動がある状況での焦点合わせは、検査時間の延長を招いていましたが、EDOFにより明瞭な観察画像が得られることで、内視鏡検査におけるさまざまな課題を解消して病変の診断精度向上など、より高精度な検査に貢献できるようになりました。
RDI(赤色光観察:Red Dichromatic Imaging)
緑・アンバー・赤の 3 色の特定の波長の光を照射することで、深部組織のコントラストを形成する、光デジタル技術を用いたオリンパス社独自の新たな画像強調観察技術です。内視鏡治療中に発生する消化管出血により、視野が妨げられ病変部の処置が困難になるケースがあります。RDI 観察を行うことにより深部血管などの視認性向上が支援され、迅速かつ容易な止血処置をサポートし、より安全で効率的な治療に貢献できるようになりました。
内視鏡治療中の出血時には、内視鏡の視野全体が血液で赤くなってしまい出血部分の特定が難しいことがあります。そのような状況下でもRDIは出血部分をとらえるのに役立ちます。RDIにより、出血部分や出血の流れを色の濃淡で容易に確認でき、止血すべき部分が分かりやすくなるのです。
胃や大腸の病変を切除する手術方法として近年、開腹手術に比べて入院日数が短く患者さんの身体への負担も軽い、内視鏡的粘膜切除術や内視鏡的粘膜下層剥離術が注目されています。これらの治療時にRDIを用いることで、粘膜などの深部にある血管や出血時の出血部分が見やすくなり、出血の防止や、出血時の迅速で容易な止血処置が可能となりました。より安全で効率的な内視鏡治療への貢献が期待されます。
TXI(構造色彩強調機能:Texture and Color Enhancement Imaging)
通常光観察下での粘膜表面の「構造」「色調」「明るさ」の 3 つの要素を最適化する画像技術です。通常光観察では見にくい画像上のわずかな色調や構造の変化が、TXI を活用することにより強調され、病変部などの観察性能向上に貢献することが期待されます。
※画像はすべてオリンパスメディカル社提供